- カメラ
約30年のロングセラー!PENTAXの中判カメラ67(ロクナナ)とは?
ゴツいフォルム、鈍器並みの重量に化け物みたいなサイズ感、そんなイメージに反して繊細で柔らかな写真が撮れる1969年生まれの中判カメラ。それが生きる化石「PENTAX 67」です。
あまり馴染みがなくなってきた中判フィルムカメラですがPENTAX 67に関しては今でも不思議なぐらい需要があり人気です。むしろ、インスタやYouTube等でもユーザーを見かけることが増えた気さえします。
そんな通称ロクナナが「どんな中判カメラか」「なぜ需要があるのか」等をカメラ買取店査定士の私がご紹介致します。
中判カメラPENTAX 67とは?
PENTAX 67は、ペンタックス(旭光学工業 株式会社)によって発売された中判フィルムカメラです。一般的な一眼レフカメラのような操作性にも関わらず、中判フィルム(6x7cmサイズ)を使用することにより高い解像度(写真の面積にして約4倍)で細部までくっきりと撮影することができます。
ロクナナやバケペン(化け物ペンタックス)の愛称で親しまれており、1969年に発売されてから約30年間続いたロングセラー商品です。レンズも豊富で発売されてから50年以上経つ今でも愛好家が多いです。
また、実際に持ってみると圧倒的な重厚感に驚かされます。
なんとファインダーとレンズ込みで約2kg。軽めの鉄アレイぐらいあります(実際に持ってみると鈍器感がすごい…)そのため当時現役で使っていたご高齢の方が「重くて持つのがしんどくなった」という理由で手放す方も多いです。
写真がすごいよ、ロクナナ。
ロクナナでどんな写真が撮れるかというとフィルムとは思えないほど細かで鮮明な写真が撮れます。フィルム写真では見慣れない高い解像度なだけあって、なんだか写真1枚に閉じ込めた感があります。
色味も独特で「青」はただの青ではないたぶん自分の全く知らない名前の色の「青」だし、「黒」も全てが普通の真っ黒ではない墨のような霞がかった「黒」って感じです。今で言うところの加工写真のような色味ですが、もちろん加工じゃない本物のカメラ(とフィルム)の色味です。
ポートレート写真を観てみるとボケの溶け具合も良く、少しザラザラした質感も純度100%アナログという事実込みで見とれてしまいます。
あの堅牢なボディでブローニーフィルムに「こんな繊細な写真を物理的に焼き付けたのか…」と思うとすんごくロマンを感じます。今まではあの約2kgを持って写真を撮りに歩き回っていたカメラマンの気持ちがあまりよくわかりませんでしたが、ロクナナの写真を観ているうちに少し気持ちがわかった気がしました(ロクナナの写真はGoogleで「PENTAX 67 作例」と検索するとたくさん観ることができます!)
ただし、最近(2024年8月現在)ではちょっと怖いぐらいフィルムの値段が上がっています。ロクナナではブローニーフィルム(120フィルム)1本で10枚撮れますが、アマゾンで1本いくらか調べたところ1本2,000〜3,000円ぐらいします。さらに追加で発生する現像費用はピンキリですが、1回のシャッターに相当な気合が入るのは間違いないでしょう。
ロクナナは2種類ある
67を見ていると6×7と67の2種類あることに気づきます。実は2つとも基本的には変わりません。
大きく違うのがファインダーのロゴです。1989年にブランド名がASAHI PENTAXからPENTAXに変更されたタイミングで変わりました。そのタイミングで「6×7」から「67」になったのです。
ただし、1967〜1989年に発売された6×7でも細かな改良がありました。
1970年のモデルから一部のパーツが変わりボディが軽量化され、さらに空シャッターが切れるようになったり、1972年のモデルから巻き上げレバーの操作性が改善されたりしました。
また、1976年の改良が大きく、ミラーアップレバーが追加されミラーショック(ミラーによる揺れ)による手ブレが軽減されました。望遠レンズで撮る人からしたら必要な機能ですね。個人的には1976年以降のロクナナが狙い目かなと思います(1989年以降に発売された「67」を買えば安パイです)
また、絞り優先自動露出などが搭載された「PENTAX 67II」も1998年に後継機として発売されています。
通称バケペン?
ネットでロクナナを検索すると、様々な記事で通称「バケペン」と呼ばれています。
「バケペン」というのは、ペンタックス67シリーズの愛称で「化け物ペンタックス」を略したものらしいです。その圧倒的なサイズと重量感に由来しているみたいですね。
でも、私は実はこの通称「バケペン」に若干の違和感があります。
少なくとも20〜30人以上のロクナナユーザーにお会いしていますが、実際にロクナナを見て「バケペンですね!」と言ってもあまり反応がよくないです。というか、当時(1960〜80年代に)ロクナナを使っていた世代の方たちが「バケペン」と自発的に言ってるのを聞いたことがないです(ほとんどがロクナナ呼びです。)
ただし、ネット「PENTAX 67」と多くの記事で通称「バケペン」と紹介されています。もしかしたら、バケペンは当時一部のカメラ好き界隈で呼ばれていて、ネットが普及してから改めて浸透した通称なのかな?と思うことがあります。
中古で需要があるロクナナ
ロクナナは中古でも需要があります。
買取金額もしっかり値段が付きますし、販売してもすぐに売れてしまいます。
おそらく中古需要の高い要因として「35mm一眼レフと同じ操作性」というのが大きいと思います。
当時プロカメラマンが使っていたような中判カメラなので「操作性が難しいのでは?」と思う人も多いですが、普段からフィルムカメラを扱う人であれば比較的容易に扱えます。
また、ロクナナの写真(詳しくはググってください!)を観てわかることですが、本当に素敵な作品ばかりです。
コスト的にロクナナは敷居が高いので、カメラにかなり熱中している人がメインユーザーです。高いロクナナと高いフィルムを買って、一枚一枚大切に撮影して、現像する人の写真。そりゃ素晴らしい写真が多いはずです(私も今回記事を書くにあたり67写真を検索して観ましたが小一時間あっという間でした)
そんな作品を観た人が「私もこんな写真が撮りたい」と思って買うのかもしれません。
また、ロクナナのなかでも木製グリップが有るのと無いのとでは人気がかなり違います。
木製グリップは67に装着するカメラアクセサリーですが、装着するとクラシックな堅牢メタルボディにウッドの相性が良いですね。
また、実際に持ってみると木製の手に馴染む感じの握り心地がとても良く、撮影するときの安定性も格段に上がることがわかります。
これからも「生きる化石」ロクナナ
ちなみに、生きる化石とは私が呼び始めたわけではありません。
1969年に発売され、販売が30年続いた頃には既にそう言われていたみたいです。
そんな異名を持つロクナナですが、未だに絶えず需要があります。「生きる化石」で今を切り取るロマンや、容易な操作性、化け物みたいなサイズでこれ以上無いぐらい良い仕事をする中盤フィルムカメラだからです。
そんなロクナナですが、これだけ素晴らしいカメラなのにも関わらず、数多くのユーザーのご自宅で未だ発掘されないままのモノが多いのが現状です。
もし「もう何年も使ってないな…」や「たしか実家に67あったな…」という方がいらっしゃいましたら、買取店に相談してみるのはいかがでしょうか。
もし使わなくなったカメラやレンズ、カメラアクセサリーなどお持ちでしたらオーディオ・楽器・カメラ専門買取店「ニーゴ・リユース」に是非一度ご相談ください。買取後の販売経路が豊富なニーゴ・リユースのカメラ好きの査定士が喜んで査定致します。
YouTubeでも音楽とカメラの歴史を紹介していますので是非ご覧ください!